貿易障壁とは国際貿易の障害となるものすべて
国際貿易は,本来,世界中の国々が合理的な判断に基づき,自由に国境を越えた経済取引を行うことにより,すべての国が利益を得られる経済行為です。それゆえ,すべての国にとって自由貿易は望ましいのです。
管理される国際貿易
しかし,現実には各国間の経済に発展段階,規模,技術力など様々な差異が存在し,かつ著しい貧困に陥る国々や人々が存在しています。そのため,自由な国際貿易は途上国など未発達な国々や恵まれない環境にいる人々に不利益をもたらす恐れを秘めています。
それゆえ,途上国を含め世界中の国々や人々が国際貿易から利益を得て着実に経済成長を遂げていくために,何らかの方法で自由な国際貿易を抑制することが必要となる場合もあります。もちろん,この抑制策は一時的な措置とすべきであり,その間に他の方法により恵まれない国や人々が経済的に自立できるような支援策を採るべきです。
2つの貿易障壁:関税障壁と非関税障壁
国際貿易は,国内における経済取引ではなく,国境を越える経済取引であることから,各国政府は国内取引とは異なる特別な措置を国際貿易に対して採ることがあります。それが関税措置であれば,「関税障壁」と呼ばれます。
一方,関税以外の措置が国際貿易を阻害する場合には,「非関税障壁」と呼ばれます。一般に,この非関税障壁には,
- 輸出許可制度
- 輸入割当制度
- 補助金制度
- 輸出自主規制
- 禁輸
- 現地調達要求
- 平価切下げ
- 貿易規制
などの経済政策があります。
そして,このような意図的に国際貿易を管理する目的で作られた経済政策以外にも,直接的に貿易管理を意図していないルール ― 例えば製品の安全性を担保する製品規格,特許・著作権を管理する法律など ― の国家間の差異であったり,文化や伝統に由来する消費者の好みの差異であったりと,様々な事柄が非関税障壁に該当します。
自由貿易こそ望ましい
経済学は,自由な国際貿易は一方の国だけでなく,相互の国々に利益をもたらすことを証明しています。言い換えれば,自由な国際貿易を阻害してしまう貿易障壁は,貿易取引に携わる各国経済にとって有害となり得ます。つまり,貿易障壁は世界的に経済効率を低下させる恐れがあります。
それゆえ,自国の利益を追求するために,意図的に貿易障壁を高める行為は厳に慎むべきことです。たとえ一時的に貿易を抑制すべき状況であっても,各国はその措置の合理性,適切性を国際社会に対し明らかにする責任があります。そして,意図していない貿易障壁も世界経済にとって有害となり得ます。各国は,合理性の無い,他国に害となる貿易障壁の削減に取り組むべきです。
貿易障壁を削減する
貿易障壁を削減することは,各国の自由な貿易取引を促進させ,相互依存関係に基づく国際分業体制を構築し,各国の経済効率性を高め,将来の経済的な利益を得ることにつながります。
恵まれない国や人々のことを視野にいれ,世界経済の発展のために,各国は互いに貿易障壁の削減に努めることが大切です。