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ロシアからの輸入の現状

グローバル化を活用し人びとの幸福な将来を築く

RIITレポート No.5

所長 井尻直彦

「野蛮な企て」ロシアによるウクライナ侵攻

2022年2月24日に始まったロシアのウクライナへの軍事的侵攻は,COVID−19の負の影響により長期にわたり低成長を続ける世界経済をさらに不安定にさせました。戦争は最も大きな貿易障壁であり,国際貿易の行く末を不透明にします。ロシアへの経済制裁として,2022年2月27日に日米欧諸国はロシアの主要銀行とのSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SC)利用をほぼ停止しました。これにより,ロシアとの貿易決済が困難となり,ロシアと主要国との貿易障壁がさらに高くなりました。
2009年以降ロシアと日本の貿易は図1にあるように日本の貿易赤字が続いています。これまで日本はロシアから主に天然資源を輸入してきました。2020年の輸入額では,天然ガス,原油,石炭などのエネルギー資源が全体のおおよそ半分,また白金(プラチナ)が15%程度を占めています。

図1 日本とロシアの貿易額推移(1979年−2021年)
出所:財務省『貿易統計』より筆者作成

日本の鉱物性燃料の輸入先国から見るロシア

 2020年の鉱物性燃料の輸入額(図2)では,オーストラリア(21%),サウジアラビア(17%),アラブ首長国連邦(17%),アメリカ(8%),カタール(7%),そしてロシア(6%)と続いており,ロシアは日本にとって6番目に大きな鉱物性燃料の輸入先国となっています。
以下に,主要なエネルギー資源ごとの日本の輸入先国を確認します。
 まず,石炭,コークス及び練炭の輸入額(図3)では,オーストラリア(64%),インドネシア(11%),ロシア(10%)となっています。
 次に,天然ガス及び製造ガスの輸入額(図4)では,オーストラリア(32%),アメリカ(19%),マレーシア(11%),カタール(10%),そしてロシア(7%)となっています。
 そして,石油及び同製品の輸入額(図5)では,サウジアラビア(32%),アラブ首長国連邦(30%),カタール(9%),クウェート(8%),韓国(6%),そしてロシア(3%)の順となっています。原油は主に中東の産油国から輸入しており,石油関連製品は韓国から輸入しています。したがって,石油及び同製品では相対的にロシアへの依存は低いと言えます。

図2 鉱物性燃料の輸入
出所:財務省『貿易統計』より筆者作成
図3 石炭、コークス及び練炭 の輸入
出所:財務省『貿易統計』より筆者作成
図4 石油及び同製品の輸入
出所:財務省『貿易統計』より筆者作成
図5 天然ガス及び製造ガスの輸入
出所:財務省『貿易統計』より筆者作成

 日本の重要な白金(プラチナ)輸入先国,ロシア

 2020年の日本の白金(プラチナ:HS 711021000)の輸入額(図6)では,ロシア(43.3%),南アフリカ(42.6%)で,この二国が全体の約86%を占めています。白金のロシア依存度は高いといえます。
 Johnson Matthey社の「PGM市場レポート2021年2月」(注1)によれば,白金の産出国は,第一位が南アフリカ,次いでロシアが第二位です。白金需要の産業別内訳は,自動車触媒用(41%),宝飾需要(27%),化学(9%),エレクトロニクス(3%),ガラス(3%),石油(3%)となっており,白金は,宝飾品だけではなく幅広く工業用に利用されていることがわかります。

図6 白金(プラチナ)の輸入
出所:財務省『貿易統計』より筆者作成


今後のロシア貿易の行方

 ロシアのウクライナ侵攻は,中国,北朝鮮,ベラルーシ,ベネゼエラなどの親露的な国々を除き,世界の主要国とロシアの貿易取引を著しく減らすことになるのは間違いありません。仮に,この「野蛮な企て」であるロシアのウクライナ侵攻が止まったとしても,侵攻前の貿易取引に戻るには長い時間が掛かるでしょう。
 日本には,ロシアからしか輸入できない重要な製品はありません。上述した天然資源は他国からの輸入量を増やすことで代替することが可能です。もちろん,原油は「OPECプラス」の生産目標に左右されるでしょうが,特定の国に過度に輸入を依存するのではなく,平時からできるだけ多くの国から輸入できる可能性を確保していくことが大切です。これこそが重要な経済安全保障のはずです。そのためにも,貿易障壁を削減するたゆまぬ努力が重要な意味を持ちます。
今後,短期的に世界市場におけるロシア輸出分の供給量が減少することから,世界の需要を満たすためにこれら天然資源の価格は上昇すると考えられ,人々の生活に影響を及ぼすことになるかもしれません。
 平和こそが,貿易障壁を削減し,世界の人々の幸福を高める最も大切なものであることを,改めて世界の人々が認識してくれることを望みます。

この地球上に,戦争のない世紀を,戦争のない世界を,実現しましょう。

注1:http://www.platinum.matthey.com/documents/new-item/pgm-market-reports/pgm-market-report-february-2021-japanese.pdf

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