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コラム−知的財産権と国際貿易

グローバル化を活用し人びとの幸福な将来を築く

特許や商標などの知的財産権は,新たな発明,ノウハウ,著作権など権利の所属を確定するためのものですが,国際貿易においてもこのルールは非常に重要な役割を担っています。

過去のパテントの例(ハーレー社,オートバイ)
この写真はアメリカのオートバイクメーカーであるハーレー・ダビッドソン(Harley-Davidson)社が1924年に申請した特許図面です。右下に見える1,510,937という数字はアメリカの特許番号であり,彼らの技術はこの特許登録によって守られていました。

今日では多くの先進諸国では,知的財産の創造(知的想像力:intellectual creativity)が企業の成長にとって重要となっています。この知的想像力には,

・発明
・設計ノウハウ
・美術創作

を想像する力が含まれ,企業はこれらを駆使し,自らの知的財産を創造しています。そして,これらの発明等には多くの研究・開発費用を費やしているため,特許,商標などとして登録し自らの知的財産を守っています。これは,発明した技術やアイディアが盗まれてしまうと誰も新しい技術などを発明しなくなってしまうため,これらの盗用などを未然に防ぐことが目的とされています。しかし,自国の特許法に基づいて特許権などを取得したとしても,その効力は自国に限られるため,海外への進出や輸出を考えている場合はこれに加えて国際特許の出願が必須となります。ところが,これらの知的財産権保護に関連する法律は国によって違いがあり,必ずしも自国と同じ水準で知的財産権が保護されるわけではありません。

そこで,世界貿易機構(World Trade Organization: WTO)はこの問題を解消するために,1995年に加盟国における知的財産権保護の水準を均一化することを目指し,「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」を発行しました(外務省ホームページ参照)。しかし,現在も加盟国間での知的財産権保護の水準はバラつきがあり,所得の高い国ほど知的財産権保護の水準が高い傾向となっています(若杉隆平・伊藤萬里 (2011)参照)。つまり,先進国と途上国の間で知的財産権保護の水準に大きな違いがあるため,先進国にとっては自分たちの発明が使用されている商品などを途上国で販売すると,自国での販売とは異なりアイディアなどが盗まれてしまう恐れがあります。結果的に,この知的財産権保護の水準が異なることが,企業の海外進出や輸出に対して障壁となってしまいます。

各国の知的財産権保護に関する法律の多くは,海外からの輸入を妨げることを意図して制定されたものではないかもしれません。しかし,現実的には国際的に知的財産権保護の水準が統一されていないため,意図されない形で非関税障壁となってしまっている恐れがあります。そのため,自由貿易協定や経済連携協定の中に知的財産権保護の議論を含めたりすることで,グローバル・スタンダードか,少なくとも自国と同水準の知的財産権保護を設定することが求められています。

RIIT研究員 羽田翔

(参考文献)

若杉隆平・伊藤萬里 (2011) 『グローバル・イノベーション』慶應義塾大学出版会

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